(一)

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「当たりですよ、ここら一帯、アトランティカの宮殿です! 大量ですよ、床も柱も全部大理石なんでしょうね、あんな大きな塊はじめてですよ!」  興奮を隠しもせずに、若者はまくしたてた。大理石。アトランティカには最大の採掘抗があったとされているが、長年探検家を名乗ってきたオグノスにはさして珍しくもなかった。 「そうか。他に、何か見つかったか?」 「彫刻がいくつかと宝飾品ですね。後は人骨です。鑑定士に見せるために持ち帰ろうと思います。これが時の権力者なら、俺たちも歴史に残る探検家ですね!」 「結果も出とらんのに騒ぐな」  煩わしげにオグノスは顔をしかめた。目の前の青年の清々しい笑顔に、過ぎて行った同僚たちの姿が重なっては消えていく。  日常とは違うなにかを求めて共に旅してきた仲間たち。志半ばで尽きた者、平穏な生活に戻って行った者、財宝を手に巨万の富と共に満足しその足を止めた者。そんな中、まだオグノス一人だけが納得できず、秘境とされる場所へ赴く日々を続けている。 「オグノスさんは落ち着きすぎなんですよ。ほら、来てください!」 「わかった、わかった」
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