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「逃げて!貴方だけでも!早く!」
言われなくても分かってる…!
女の言葉を背に俺は走る
どうやらあいつは捕まっちまったようだ。助けに行きたいところだが、正直奴に敵う気がしない
土砂降りの雨の中、全身が濡れるのも厭わずに俺は走り続ける
裏路地は複雑に入り組んでいる
右に曲がり左に曲がる
塀を飛び越え、ただひたすら走り続けた
なのに、後ろから迫り来るプレッシャーは遠のく気配を見せない
振り返れば直ぐそこに奴がいるような。そんな重圧が場を支配していた
「はぁっ……はぁっ……」
仕事柄体力を使うとは言っても、これだけ長い距離を走り続けたことなんて一度も無い
心臓は早鐘を打ち、今にも爆発しそうだ
一本の長い路地に辿り着いた時、ガクンと膝が崩れ落ちた
どうやら限界みたいだ
程なくして、濡れた土を踏みしめる靴音。
すぐ近くまで追いつかれちまったようだ
何とか立ち上がろうとする俺の耳に、妙にのんびりした声が届く
「やれやれ、やっと追いついた。あんまり無理させないでよ、もう若くないんだからさ」
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