イントロダクション・ディストラクション

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******** 人通りもまばらな道を、男は歩いていた。 ニット帽を被り、少し前傾気味の姿勢。歩みはそれほど速くない。 と、前方から一人の少女が歩いてきた。 「にんじん、玉ねぎ、ピーマン、じゃがいも……」 野菜の名前を連呼しながら歩く少女。 母親にでも頼まれたのだろうか、買い物籠をぶんぶん振りながら歩いている。 「にんじん、玉ねぎ、ピーマン、じゃがいも…」 男と少女の距離は段々と縮まっていく。 二人がすれ違う瞬間、男は常人には見えない速度で少女に手を伸ばす。 しかし彼女は気付かない…! そのまま二人が通り過ぎる。 少女は言葉を続ける。 「にんじん、玉ねぎ…………じゃがいも」 徐々に少女は遠ざかっていく。 「にんじん、玉ねぎ…………じゃがいも」 きっと少女は怒られてしまうだろう、買い忘れたものがあると。 可哀相だが仕方が無い。 男は自分の力を改めて実感しフフッと笑い、呟いた。 「ピーマン………」 ********
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