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いつか空に還ってしまう君たちに、できるかぎりたくさんの物語を。
月夜の元、一人の男が目的の物を追いかけ、屋根づたいに空を飛んでいた。
月の光に帽子をかぶった深い青の髪は輝き、長い燕尾服と首元の水色のタイが風になびく。
眼鏡の奥のコバルトブルーの瞳が見つめるのは薄紫色の一匹の鳥だった。
忙しなく翼を動かし、小さな鳥は男から逃げる。
右に左に。
左に右に。
時には上下に。
幾度となく男の白い手袋をはめた手が鳥をかすめるものの、なかなか捕まらない。
軽い舌打ちを心の中ですると、さらに一歩を強く踏み出す。
鳥の真正面に飛び出て両手を広げると、かなりのスピードで飛んでいた鳥は止まれず、男の胸へと勢いよく飛び込んだ。
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