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1-1
プロローグ
「冗談だろう……」
とある天の男がつぶやいた。
それもそのはず、男がいる場所は忘れられたようにたたずむ塔の地下牢。
窓が見える一面を残し、三方を鉄格子に囲まれている。
個別に複数の人物を収容できるように、同じ造りの独房がいくつも並んでいた。
しかしそれは、つい先ほど明かりを持って入れられたときの情報であり、今は窓からのぞく曇天の光だけが頼りなため、自分の周囲さえどうなっているのかあまりよくは見えなかった。
そして地下というせいもあってか、空気は湿っぽく、重い。
出口を求めるように見た窓には錆びついた鉄格子が嵌め込まれ、ここだけが無用心にも外れそうになっていた。
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