第一章 彼方からのもの

9/52
前へ
/91ページ
次へ
爽やかな天気とは真逆に陰鬱な気分のまましばらく歩くと、僕の通う、私立朱夢(あかゆめ)高校が見えてきた。 朱夢高校は特別、進学校というわけではなく、かといって所謂不良の集まる高校というわけでもなく、良くも悪くも生徒も教師も中途半端な高校なのだ。 さらに、この高校は校則もそこそこ緩く、なんとなくのんびりとした雰囲気の漂う高校でもある。 とはいえ、僕自身はこの高校のこの雰囲気は嫌いではない。 何も目的もなく、ただただ無為に日々を過ごしている僕にはちょうどよい。 下駄箱で靴を履き替え、三階にある、自分達の教室───1ーB───に向かう。 ふと、何やら今日は普段に比べ 少しだけ騒がしいような気がする。 「…………まぁ、僕には関係ないけど…」 結局僕はその喧騒を大して気にとめず、再び教室へ向かった。 ドアを開け、教室に入った瞬間、クラス全体が一瞬シンと静まり返る。 そしてどこか気まずそうに、友人同士で話を再開する。 こうまであからさまな反応をされると、さすがに気分が悪くなる。 (……仕方がない、か) 入学から1ヶ月以上立っても、未だにまともな友人一人作らず、基本的に一人でいて、なおかつこんな目立つ容姿をしているのだ。 他人が近寄りがたいわけだ。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加