第一章 彼方からのもの

10/52
前へ
/91ページ
次へ
カバンの中身を机の中に入れ、今日提出の課題と、今日当てられるであろう数学の予習のため、数学のノートと教科書を取り出す。 課題は昨夜、大して時間もかからずにやっていたので、その見直しをしようとしたら─── 「おっす、ナコト」 『いつも通り』前の席のマヌケが話し掛けてきた。 「……うっさい邪魔だ死ね消えろ」 「おぉぅ……朝っぱらかろキツいねぇ、友人に対して」 「………誰が、誰の、友人だって?」 「俺が、お前の」 この自称僕の友人を名乗るイケメンは、深海 透真(フカミ トウマ)。 「………寝言は寝て言えくされディープ・ワン」 別名、深き者。 何故そんな不名誉な名を冠されているのかというと、単純にコイツが水泳部において、期待の新人などと言われており、なおかつコイツの実家が魚屋だからだ。 もっとも、誰が言い出したのかも解らないようなあだ名だが。 「おいおい、俺とお前は友達だろう。お前は、俺の友達になるって言ったんだから」 そう、僕はコイツの目の前で口にしてしまっていたのだ、『お前の友達になってやる』と。 ………これだけだと、不愉快な誤解をされそうなので言っておくが、別に僕が自ら進んで言ったわけじゃない。 この魚臭さいディープ・ワンとのゲームに負けたからだ。 入学から二週間が立ったあたり、何をトチ狂ったのか、コイツは僕に『よし、ゲームをしようぜ。俺が勝ったらお前は今日から俺の友達だ!』などと一方的に宣言してきたのだ。 そして僕はコイツとのゲームに負け、仕方なくコイツの友達という関係をしているのだ。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加