第一章 彼方からのもの

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………そんなわけで、僕の人生において、〈ダイス〉は欠くことの出来ないものでもあるのだ。 とはいえ、この〈ダイス〉が全て僕の人生において、『+』になっていたかというと、全然そんなことはなかった。 幼稚園に通っていた頃は、僕はこの〈ダイス〉が、自分にしか見えないものだとは知らなかった。 当然、僕以外の全ての人間にも見えていて、自分自身の〈ダイス〉を持っているのだと思っていた。 小学校の頃、どうもこの〈ダイス〉は、自分にしか見えないらしいという事実に、ようやく思い至った。 そしてその事を、同じクラスの友人達にその事を話すと 『何言ってんだよぉ、そんなの嘘だろぉ』 『嘘つきー』 『嘘つきー嘘つきー』 とまぁ、後は面白いほど簡単に、僕の立場は落ちていった。 1ヶ月で友人達は離れていき 3ヶ月で僕と話す人間はいなくなり 半年で僕の居場所は完全になくなった。 そして、中学生の頃、相変わらず僕と話す人間はおろか、僕の居場所もなかった。 ほとんどの人間が小学校と同じであるため、やはり入学1ヶ月ほどで僕の話はクラス中に広まり、再び僕は孤立した。 けれども正直な所、小学校時代はともかく、中学校時代は、一人でいる事に苦痛を感じなかった。 元々、他人とコミュニケーションをうまく取れないタイプ(コミュ障)だったので、よりいっそう一人でいることが楽に感じるようになっていた。 そんな感じで、今年の4月、めでたく高校生となった僕は、相変わらず『ほぼ』一人だった。
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