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あれは、見事に高校デビューもせずに高校入学を果たしてから約一月ほど立った頃だった。
「……あぁ………」
相変わらず自分は朝起きるのが辛いようだ。
この年で低血圧がどうなどと言うのもどうかとも思うが。
いまだはっきりとは醒めない頭のまま、階段を下り一階の洗面所へ向かう。
洗面所で冷たい水で顔洗うことで、ようやく自分の頭もはっきりしてくる。
「はぁ………」
自分の正面にある鏡に映る自分の姿を見て、思わず溜め息が洩れる。
鏡に映る顔はよく整っており、一見して男なら十人中八人は振り返るような、美少女と言っていいほどだ。
ただし、その瞳は美しい顔に似合わず、ひどく暗く淀んでいる。
正直な話、僕はこの自分の女顔が好きではなかった──いや、むしろ嫌いだった。
この顔のせいで、自分の私服姿を見た他校の男子生徒に『一目惚れでした』などと吐き気の催すような邪悪な思いを告げられた。
当然、僕にはそんな趣味はないため、丁重に───物理的とも言う───断らせて頂いた。
他にも、僕ははっきり言ってそこらの女子よりよっぽど人目を引く容姿をしている。
女子からしたらさぞ、面白くないことだろう。
男子からは異質な目で見られ、同じように避けられている。
他人に避けられることは今では苦でもなんでもないが、やはり自分の容姿がこうでなければ、また少しは違っていたのではないか。
そう思わずにはいられない。
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