11人が本棚に入れています
本棚に追加
そうこうしてる内にクラフトがすぐそこまで迫っていた。俺は痛みを我慢して振り向き様に再びインセプションを放った。
「ッ…!…フンッ!!」
クラフトが何事も無かったかのように一笑して双剣を振り回す。俺は振り向いた拍子に足を崩して尻餅を着いた。おかげで剣は頭上を通過して行き、数本髪の毛を失うだけで済んだ。
だが、インセプションが効かなくなってる。力はちゃんと発動していたからクラフトの方が慣れてしまったんだと思う。
もはや避けるまでも無いと言った感じでクラフトがニタついた。
クラフトが乱暴に剣を掲げ、降り下ろす。その瞬間、俺は砂利を掴みクラフトのモテ顔目掛けて投げ付けた。クラフトの切っ先が狂い、俺は剣の軌道と逆方向に身体を転がしてその場を離れた。
「クソッ!!さっきからちょこまかと!!」
砂の付いた顔を擦りながらクラフトが苛立ちをあらわにする。
そこにアキトが駆け付けた。
「大丈夫かカイ!」
アキトがそう言った瞬間、砂も払い終えていないクラフトが声に反応した。
「バ、バカ来るなッ!!」
そう叫んだがもう遅い。目も満足に見えていないクラフトは焦り気味に剣を声の方向に振り回した。
剣はアキトの首に向かって行った。
付けていた首輪が断ち切られ、血が飛沫をあげた。
剣の勢いで後ろに弾き飛ばされた身体は無気力に突っ伏し、血塗れの首輪がチャラリと音を立てながら地に落ちていった。
「い、犬…?さっき人の声が聞こえたような…!?」
キョロキョロと辺りを見渡すがクラフトには俺と犬の死骸しか映らない。
そして、何かに驚いたような表情で俺にゆっくりと焦点を合わせた。
…驚くのも無理はない。
俺の目はウサギのように真っ赤に染まり僅かに光を放っていた。痛みや想いで溢れる涙にそれが反射すると、まるで血が流れているようだった。
クラフトと視線が重なる。
それと同時にクラフトが訳も分からず双剣を構えた。
目の前の昔馴染みの顔が悪魔に見える。激しい憎悪がクラフトのモテ顔を酷く歪ませていた。
俺はインセプションを放つ態勢を取った。
「フ、フンッ!またそれかよ!何度やったって………ッ…?」
クラフトがはてなマークを浮かべて自分の異変に気付いた。突然、鼻血が流れ出したのだ。
「ん…あれ…??…」
鼻を手の甲で擦って確認する。戸惑ってる先からポタポタと血が滴り落ちる。
最初のコメントを投稿しよう!