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「…おまえも俺を殺しに来たのか…?」
疲弊した表情で俺は訊ねた。
「殺す?ああ、その場にいた者を抹殺するっていう組織の命令の事か…。」
そう言うとアシタカが可笑しそうに笑う。
「はは、あんな命令守ってるのはクラフトぐらいなものさ。」
「…?」
「確かに証拠を隠滅するに越した事はないけど、多少生き残りがいたとしてもユグドラシルは揺るがないよ、それだけ強大な組織なんだから。
クラフトはほら、英才教育も受けてたし、マインドコントロールって言うのかな?小さい頃から脳を弄られて来たから組織の忠実な操り人形なんだ。組織の命令は絶対ってね。僕らとはちょっと考え方が違うんだよね。」
「…な…ッえ…?」
俺は余りの緩さに言葉を失った。組織ではクラフトみたいな忠誠心を持った奴が普通なんだと思っていた。
そして、クラフトの変わりようはやはり組織による物だったのだ。
アシタカが俺を見る。
「まぁお望みなら殺してあげても良いけど、警察が来てるし、僕らも行かなきゃならない。」
「…強大な組織の割には警察なんかにずいぶんと怯えてるんだな?」
俺がそう言うとアシタカが肩をすくめる。
「警察は別に怖くないんだけど、苦手な奴が来てるんだ。あいつは正直…怖いね。」
誰の事を言ってるか分からないけど、そんな奴がいるなんて意外だった。
「それじゃあ行くよ、またねカイ。」
アシタカがそう言って倒れているクラフトを抱き抱えた。
「待てッ!」
俺が呼び止めるとアシタカははてなマークを浮かべた。
「クラフトは…置いて行け!もう十分だ!これ以上組織の操り人形にさせてたまるか…!!」
俺がそう言うとアシタカは「ふぅー」とわざとらしくため息をついた。
そして次の瞬間、腹に強烈な衝撃が走った。
どうやら蹴りを喰らったらしい。俺は後ろに吹っ飛んだ。
苦しみながら上体を起こす。
「ぐぅ…おまえ…足骨折してんじゃなかったのか…?」
「ああ、もう治ったよ。」
そう言って笑う。
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