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「カイ、僕らは別に強制的に組織にいるんじゃない。それぞれの才能を認められ、活かす為に所属しているんだ。」
「何が活かすだ…人殺しの道具に利用されてるだけだろ…目を覚ませよ!!」
アシタカがまたため息をつく。そして言う。
「カイ。もし僕らを助けようと思うなら抜けさせようなんて考えちゃダメだ…。
潰してみろよ。ユグドラシルという組織ごと全部…!」
不敵に笑いながらくびすを返し、手を上げて合図を送った。
「さぁみんな、引き上げるよ!」
アシタカがそう言うと高台の人影が次々に消えて行った。
そして目の前にいるはずのアシタカも霧がかった視界の奥へと消えて行った。
数秒すると大勢の足音が騒がしくバタバタと近付いて来た。
「おい貴様!大丈夫か!?」
圧迫感のある口調で男がそう訊ねた。
よく見えない目にボンヤリと人影が映る。
「…警察か?」
そう訊ねると「そうだ!」と元気良く答えた。
俺は再び質問する。
「なぁあんた。今…この場所に誰かいるか?」
そう言うと警官ははてなマークを浮かべた。
「…貴様、目が…?」
そう察してから数秒ほど間があいた。周りを見渡してくれてるのだろう。
「…いや、我々の他には誰もいないようだ…。」
「そうか。」
警官の言葉で緊張の糸が途端に解けてしまったようだ、俺は身体中の力が抜けて砂利の上に寝転んだ。
疲れた…このままゆっくりと眠ってしまいたかった。
「…待て!眠って貰っては困る!今度は私が質問させて貰う番だ!
ここに誰がいた!?貴様は誰と戦っていたのだ!?」
ウトウトとしかけた時、警官の声がやかましく耳元で響いた。
「…ユグドラシル。」
眠気を堪えて小さくそう言った。
すると警官が「やはり…」と歯軋りをした。まるで何か因縁でもあるような感じだ。恐らくアシタカが言っていたのはこいつの事だろう。
「…そうだ、これを見付けたのだが?恐らくご令嬢の愛犬の物だろう…。
今あの犬は…」
警官が何か言っていたが途中から意識が無い。
この時俺は気付いて無かった。首輪だけ残して死んだはずのアキトが消えていた事を…。
俺は深い眠りに落ちていった。
眠りから覚めた時には視力も戻ってるかも知れない。
…そう期待していたが、丸一日眠っていても視力が戻る事はなかった…。
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