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そして、僕は黄色いソファの真ん前にいる。
「おーいエリー。目が覚めたみたいだよー。」
「ふぇッ!?」
突然ソファが喋りだした。いや、死角になっていて気付かなかったが誰かが寝そべっている。…驚いて変な声が出てしまった。
「ホントにー!さすがアッキー!!」
そう言って子供部屋の扉を開いて6才くらいの幼女が飛び出した。
それと同時に八角部屋の照明がパッと明るくなった。どうやらセンサーで自動に点灯する仕掛けらしい。
幼女は駆け寄って僕の切られたばかりの首もとに躊躇無く抱きついて来た。
痛っ!…と思ったが不思議と痛くなかった。麻酔かなんか使われているのかも知れない。
「傷は見た目ほど酷くなかったし、ちょっと痛覚イジっただけさ。
っていうかアッシーって言うの止めてよ。いくら僕が年下だからって…バカにされてるみたいだ。」
「えへへ、ごめんごめん!アッシーくんご苦労!!」
僕の毛をモフモフしながら幼女はキリッとした表情で労った。
「ハァ…もう良いや。」
アッシーとやらはソファに寝転んだままため息を天井に向かって吐いた。
僕ははてなマークを浮かべた。
さっき幼女の方が年上みたいな事を言っていたが…きっと何かの間違いだろう。どう見ても幼女だ。
「なぁ、そいつカイの犬だろ?勝手に連れて来て大丈夫か?」
ダーツバーの奥の扉を開いて男が出てきた。
ブラウン色の髪をオールバックにして白いワイシャツを着ている。歳は二十歳くらいだ。首や腕に邪魔くさいぐらいアクセサリーを付けていた。
「だって怪我してたんだもん!可哀想じゃん!!」
「いや可哀想って…それ敵対してる俺たちが言うセリフじゃないだろ。あっちはあっちでそいつの事心配してんじゃないのか?」
「でも怪我をさせたのはクラフトちゃんでしょ!身内の責任は最年長のあたしが取らないとね!!」
「おいおい、こんな時だけ年長面かよ。普段は歳の事言うと怒るくせに…。」
「ラルクちゃん、うるさいよ?」
そう言って幼女が笑顔を向けるとオールバックの男が青ざめた表情を浮かべた。
ちょうどその時、ダーツバーと子供部屋の間の扉が開いて男が出てきた。どうやらここはエレベーターになっているようだ。
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