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「おう、今戻ったぞ!」
なんだかぞろぞろと人が集まっている。
エレベーターから出てきた男は長身で筋肉質だ。歳は二十代後半と言った所だ。
不意にアッシーがトレーニングコーナーを指差した。
「悪いんだけどそこ閉めてくれない?さっきから黒人の笑顔が素敵過ぎて困ってるんだ。」
口には出さなかったがやはり気になっていたようだ。
「おう?開けっ放しだったか、ガハハ!どうだあの筋肉?世界大会出てんだぜ!あれが世界の筋肉だ!!」
そう言って男はうっとりとした表情を浮かべた。
オールバックの男が呆れた顔で遮る。
「それより、クラフトの容態はどうなんだ?大丈夫なのか?」
そう訊ねると筋肉好きの男が少し真剣な顔に変わった。
「治療室で眠ってる。医者の話だと脳に相当なダメージを負ったみたいで一部破壊されてしまってるみたいだ。
回復させるにはとにかく睡眠が必要らしいけど、運が悪かったら一生目覚めないかも知れないんだと。…まったく、笑わせてくれるぜ。」
それを聞くと黄色いソファでアッシーがため息をついた。
「やってくれたな、カイの奴…。」
愚痴を溢すように呟いた。
みんなの話を黙って聞いていた幼女が僕に視線を合わせてニコリと笑った。
「あのね、カイくんとあたしたちは同じクラスだったんだよ!みんな仲良しだったんだから!!」
同じクラスと聞いて学校のような物を思い浮かべたが、それにしては年齢がバラバラだ。単に区分けのような物なのかもしれない。
「強くなったよねーカイくん!」
「昔は視力が良いだけの奴だったのにな…。」
オールバックの男が幼女に続いて感慨深くそう口にする。
その二人の言葉にアッシーが反応した。
「きっと、あの人体実験の暴走の時に『見た』んだろうね…『神』を…。」
アッシーのその一言で何故か辺りは静まり返ってしまった。その変化に僕一人だけ戸惑うはめになった。
「あ!そうだ!!」
その沈黙を破ったのはやはりと言うか幼女だった。
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