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「ごめんね、紹介が遅れちゃった!えへへ!!」
そう言って首の後ろに回り込み、人指し指をひとりひとりに向けて僕の視点を促した。
「あのねー、あのオールバックのホストっぽいのがラルクちゃんでー…」
「ホストって…そんな紹介で大丈夫か?」
「あっちの筋肉ムキムキなのがイーディスたん!」
「…イーディスな。まったく、笑わせてくれるぜ!!」
「それでー…」
そう言って指で狙いを定めた黄色いソファから男が立ち上がった。
精気を失ったように髪が白く、黒とオレンジのチェック柄の衣服を纏っている。怪我でもしているのか、衣服の下には包帯を巻き付けていた。
「アシタカだ、よろしく。…こう言っちゃなんだけど、君とは他人って感じがしないよ。」
包帯だらけの僕を見て男がそう言った。白髪で一見老けて見えるが、よく見ると若い。カイと同じ二十代前半と言った所だ。
最後に幼女が僕の首から腕を離して目の前にスクッと立った。
「そしてあたしがエリー!本当はもう一人いるんだけど、今眠ってるんだってッ!」
弾けるようなトーンで言い終えると幼女は大きく両手を開いた。
そして大声で言った。
「ようこそ!ユグドラシルへーッ!!」
エリーの笑顔が眩しく輝いた。
「………。」
僕はその歓迎を素直に受け入れる事が出来ず、目を細めた。
ハスミさんの話ではユグドラシルの拠点を長い間探していたという。霧を掴むような思いで組織の痕跡を追い続けていたという…。
どうやらここがそうらしいです。
…今更だが、どうして僕はそんな場所にいるんだ?なんだかすごく怖い…。
「あー、ところで君さー?」
アシタカが僕に話し掛けて来た。
「さっき…喋ってたよね?」
そう言うとお仲間二人が目を丸くして僕に注目した。エリーに至ってはニコニコとしている。
…どうやらさっきの独り言を聞かれていたようだ、これはまずい。
こんな悪の巣窟に放り込まれて、普通の犬じゃないと知られたら何をされるか分からない。
ここは純粋無垢な犬のフリをしておいた方が得策だろう…。
「いや、喋ってないです。」
僕はそう答えた。
言葉にして伝えるって大切。
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