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男は僕の頭を一頻りに撫でると再び隊に戻って行った。
時間が出来ると僕は、今何が起こっているのか考えた。
二重の記憶の一つ、トーマの記憶が呼び起こされる。
僕が気を失って自分の身体に戻ってる間、驚く事にトーマも独立して行動していたようだ。
リリアはすでに男に救い出され、リリアと男は女と合流した。
更に遡るとペロペロがどうのこうのという記憶が出てくるが…思い出すとこの舌を切断したくなるので止める事にした。
肝心なのは今だ。
金髪の男から逃げている途中でいつの間にか消えてしまったみんながどうなったのかサッパリ分からない。
たぶんここからそう遠くは無いハズだ。リリアの匂いが僅かに僕の鼻を刺激している。
…場所なら分かる。
「ウォン!!ウォンウォンッ!!」
僕は騒がしく吠えて短髪の男の気を引いた。
「ん?どうしたのだ?」
近付く男を避けるようにして僕は森の入口まで移動する。そして振り返りもう一回吠えてみせた。
「ウォンッ!!」
そんな僕を短髪の男はじっと見詰める。
「…貴様…面白い奴だな。」
短髪の男はフッと笑ってそう言った。どうやら僕をただの愉快な犬と思ったらしい。
その時だ。
「偵察隊!前へ!!これより森に入る!私と共に来いッ!!!」
そう声を張り上げて小隊を引き連れて前進した。
「さぁ案内してもらおうか、貴様の飼い主の元へ!」
そう言って僕の前を歩く。僕は慌てて短髪の男を追い越して前に出た。
この勘の良さ、行動力、この男もまた…。
僕たちは森を駆け出した。
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