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◇◆リリア◆◇
嫌な予感が的中した時の虚しさは回数を重ねる毎に激しい憎悪へと変わる。
私には分かっていた。
ハスミさんが金髪の男の人に殺される事が…。
どうしようも無い事実は現実となり私の心にカラカラと何かが通り抜けていく。
なんの為の能力なんだろう?なんの為に未来を見るんだろう?
そんな自問が自答も出来ずにカラカラと通り抜けていく。
目の前の死体は赤みがかった髪に血が混ざって更に深みを増し、肌の白さが目を奪われるほどに強調されていた。口元はどこか笑みを浮かべているようだが、この人がどんな想いで死んでいったのかは私には分からなかった。
私はこの人の事を何も知らない。
だけど、助かって欲しかった。
この人の手を引いて必死に逃げた。だけど…。
「悔しい…悔しいよアキト…!!」
自然と友の名前が口から零れる。
アキトもハスミさんも…
私の手で救える物なんて何一つとして無い。
涙が溢れた。不甲斐ない私自身への憎しみで一杯だ。
「ああッ…ああああああー!!うわあああああああーーー!!!!」
今この場にいるのは私とハスミさんだけ。
悔しかったり悲しかったりした時、思う存分泣けるのは子供の特権だ。
私は感情のまま、その泣き声を森に轟かせた。
その時、ザッと土を踏み締める足音が聞こえた。
振り向くとそこには警察を連れたトーマがいた。
「トーマ…ッ!!」
警察を連れたトーマ、これは昔夢で見た光景だ。
私は本来、誘拐されて監禁された後、トーマが連れてくる警察に助けられるハズだった。
イレギュラーな事態が続いて新たな予感の連続で今の状況が訪れたのだ。
トーマは私の側に静かに近付いて来た。いつもなら駆け寄って来るのになんだか様子がおかしい。
少し違和感を覚えながらも私はいつものようにトーマに抱きつき、涙の拠り所にした。
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