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「クラフト…おまえだけは絶対に許さないッ…!!」
クラフトを睨み付けながらそう言った。
「許さない?ハッ、結構だね!!今更現れて仲間面されるよりよっぽど良いや!!」
ピエロでも気取ったかのようにクラフトはオーバーに両手を広げてみせた。
「みんな口ばっかりさ!施設に残された俺たちの事なんてどうせ忘れてたんだろ!!?
さぁ来なよカイ!!みんな殺してやるよ!ハス姉みたいにさッ!!」
その言葉にふと我を失った。俺は何も考えずに全力で突進した。
「うおおおおーッ!!」
顔面をぶん殴ってやろう、そう衝動的に繰り出した拳をクラフトは首を傾げていとも簡単に避けてしまう。
続いてクラフトは剣の柄を俺のみぞおちに叩きつけた。嗚咽と共に口から大量の唾液が溢れる。
「グホッ…ッ!!」
「さっきのお返しだよ!結構キツいだろ!!」
そう言うと次にクラフトは回し蹴りを繰り出した。目では見えていてもその速度に身体が反応出来ない。俺は成す術もなく喰らい、砂利を滑るようにゴロゴロと転がった。
そしてクラフトは弄ぶように横たわる俺を何度も蹴りあげた。
「ぐっ…ぐはっ…ううッ…!!」
痛みで身体中が悲鳴を上げている。動く意欲すら奪われていった。
悔しい…。
悔しくて涙が溢れだした。
強がってはみたものの、やはり勝てない。
俺とクラフトの間には明らかな戦闘経験の差があった。
勝てるとしたらインセプションで動きを止めてる僅かな間に銃を放つ事くらいだが、指先が震えて銃を握る事が出来なかった。
どうしてあの時、俺は銃なんて構えたんだろう…。
先程の情景が脳裏を過り、同じ後悔が頭の中をグルグルと巡回している。
俺の目には見えていた。
ハスミは俺が放とうとした弾丸からクラフトを守ろうとしていた。そして無防備に背中を向けた結果、クラフトの刃に貫かれたんだ。
ハスミがクラフトとどんな気持ちで戦っていたのか気付いてやれなかった。
ハスミを殺したのは…俺の鈍感さだ。
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