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「はははッ!どうしたカイ!もう終わりか!?
それじゃあこれで最後だ!!!」
クラフトがそう言いながら剣を振り上げた。そこまで高く上げれば剣を重力に沿って落とすだけで俺は死ぬだろう。
「ハスミ…」
そう小さく呟いて死を覚悟した。静かに目を閉じる。
「…い…」
…その時だ。遠くから声が聞こえた。
その声は駆ける音と共に近付いてくる。
「…い…ーかーーげーーんーーにーー~ッ
ッしろーーーッ!!!!!!!!!」
更に強調された声で勢いが増す。目を開けてみるとクラフトに白いモジャモジャが激突していた。
『ドフンッ!!』という衝突音と共にクラフトの身体は横にくの字に曲がり、モジャモジャの弾力性のせいか意外と遠くに弾け跳んだ。
モジャモジャが俺を睨み付ける。
「これ以上リリアを悲しませるなバカヤローッ!!!」
そう一喝して鼻をあらげたのはアキトだ。
逆さ分度器の目をしてる所を見るとペロペロマシーンでは無いようだ。
「あんたまで死んだらリリアが泣き続けなくちゃいけなくなるだろ!ほら立て!逃げるぞ!!後は警察に任せておけ!!」
呆気に取られてる俺をアキトがそう言って急かす。立ち上がろうとすると足の関節に痛みが走った。
「いてて…まったく、俺の状態をよく見て言って欲しいモノだな。正直逃げるほどの体力なんてねぇよ!それに…」
俺の視線の先にアキトが気付く。
「あいつが簡単に逃がしてくれるとも思えないしな。」
目の前では服に付いた汚れを手でパンパンと払うクラフトが不気味な笑みを浮かべていた。
アキトが小さくグルルと唸る。
「あいつが女…ハスミさんを…?」
そう訊ねられて俺は正直にコクりと頷く。
ギリギリという歯軋りがアキトから聞こえてくる。ハスミとアキトの間でどんなやり取りをしていたか俺は知らないが、あいつは昔からよく子供に好かれていた。
詰まらせたような息苦しさの中、口を無理矢理開いてアキトが言う。
「ッあんたらには言いたい事がたくさんある…!
車で轢かれるし、森の中一人置き去りにされるし、超感覚なんて訳の分からない能力や得体の知れない組織が出てくるし、正直あんたらに会ってから散々だ!文句を言ったらキリが無い!!
………だから、一言だけ言わせて貰う!」
呼吸を整えてアキトが続ける。
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