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───どこからか葬送の鐘が鳴る。見送っているのか、呼ばれているのか、答えは出ない。 しかし、その音はやけに騒々しい。これではまるで─── 男が目を開けると、一面の青。正しく雲一つ無い青空が目の前に広がっていた。日の高さから見て恐らく朝、鐘の音は時間を告げる物らしい。 両手を目の前の青空にかざしても血など一滴も付いていない。身体はどう考えても五体から五臓六腑に至るまで無事だった。 「生きてる……」 あまりに当たり前の事が予想外で、思わず口に出してしまった。自分の底の浅さに苦笑していると、自分に影が射している事に気付く。 どうにも気だるい身体を動かす気にはなれず、頭だけを動かして影が射す方へ向けると、少女らしき人影が膝を突いていた。 歳は十を超えたくらい。所々色褪せて、擦りきれて、薄汚れた修道服と手を組み膝を突く姿は堂に入っている。シスター、なのだろうか。
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