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話しかけようと思い、渇いた喉から声を絞り出す。 「……なにしてる」 しばらく答えを待つが、返事は無い。聞こえなかったのだろうか、もう一度さっきより強く声を絞り出す。 「おい」 返事は無い。 「おーい」 反応は無い。 「……おい!」 「うーーーるさい!!」 「……なんだ聞こえてたのか」 修道服の少女は目を瞑ったまま、口だけを動かし始めた。 「なにしてるか、ですって?見てわかりませんか?」 怒っている口調だがとても耳に涼しい、透き通った声だった。目を瞑れば、いい眠りに就けそうな。 「そうだな、見てわからないから聞いている。強いて所見を述べるなら、祈っているように見えるが」 「そのとおりです。あなたのせいで台無しなんですけど」 最初の言葉に強いアクセントが込められていた。どうやら祈りを途中で遮られたのが気に入らないらしい。 「そうか、それは災難だったな。ところで、なんで祈っているんだ」
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