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身体を起こそうと四肢に力を込める。中途まで起き上がって強烈な目眩が襲う。 ふらついた上半身を左手で支えて、何とか体勢を立て直した。 「大丈夫ですか?」 「ああ……死にはしない」 目眩と共に先程までの強烈な死のイメージが蘇る。悪いユメだ、と振り払って神経に意識を通していく。貧血のせいか感覚が鈍い。 「わたしは……そういう冗談は嫌いです」 「む……冗談を言ったつもりはないが、確かに聖職者の前で吐く言葉では無いな。悪かった」 「そんな、謝ってもらうつもりじゃ……うむむむ、またやっちゃったかも。これじゃまたシスターに思慮が足りないとか言われるなあ……」 「思慮については知らんが、腹に一も二も貯められるより気持ちいいけどな。個人的には」 「ほんとうですか!!」 自省して翳った少女の顔が、一転して明るくなった。単純なのか純粋なのかさっきまで『仕事』をしている時とは、まるで印象が違う。 「ああ、あくまで個人的には、だが。一般的には違うのだろう、言わなくてもいいことがあるのは否定しないな」 うぐっ、なんていうどうかと思う呻きが少女の口から漏れる。余程思い当たる節があるらしい。
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