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まだ体はあつかった。
どんどん温度は上がっていく。
私はフフッと笑い、
あなたの体をゆっくりとなでた。
”俺に触れるとケガするぜ”
そんなキザな言葉を言っていた頃が懐かしい。
もう今はそんな心配や不安なんて無い
私はなでた手を、ゆっくりと、ゆっくりと、下へ持って行った。
誰もいないから、いいよね
下へとのばした手を、張りつめた糸をほどくように、少しずつ動かしていく。
下にあるそれを少しだけ、弄ってみる。
あなたの鼓動がどんどん速くなる。私に負けじと動きをどんどん速くする。
あぁ、幸せだ。とても気持ちが良い。
もうこのまま、眠ってしまいたい。
そうだ。少しだけ、寝てしまおう
あなたの隣なら、とてもいい夢が見られそうな気がする。
少しだけ、
おやすみなさい。
私はあなたの名前と共に、眠りのあいさつを言う。
おやすみなさい、
扇風機。
夏の日、六畳半の部屋の中。
少女は作動し続ける扇風機の隣で小さな夢を見る。
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