1人が本棚に入れています
本棚に追加
はたから見れば僕たちは仲が良いように見えるだろう。しかし、僕はこの男の名前を知らない。
そして彼も僕の名前を知らない。
そういえば彼との最初の会話もインパクトが強すぎて、今でも覚えている。
『自分のことはミタラシと呼べ。小学生の時からミタラシだから、ミタラシだ』だった。とんだ変わり者だ。
「エイリアンバーガー……」
彼がそのエイリアンの肉をほおばると同時に小さく呟くと、彼は、盛大にむせ返った。目尻の雫に僕の姿が映える。
「アホか! なんつー事を言うんだよ……。食う気が冷めたよ全く」
盛大に笑う僕を見て彼もどことなく機嫌がよさそうだ。
「ところでよ、お前これ知ってるか?」
そう言ってミタラシは携帯の画面を見せた。例のサイトだった。
「お前まで……」
僕は溜息を吐いてのりだした身体を戻すと、エイリアンバーガーを口に含んだ。――以外とイケるな……。
「あいかわらず堅物だな、少しは周りの波に流されてみろよ。別にお前の人生が終わるわけじゃあるまいし」
「いいだろ別に、そもそも僕より堅物なお前がなんでそんなフランスロリータ人形まがいの人物に従うんだ?」
彼は少し顎に手を据えて考えて口を開いた。
「ロリコン発言は見逃してやる。しかしだな、イナガワ。俺も最初は馬鹿馬鹿しく思ってたんだけどよ、友達から登録だけでもいいからやってくれって頼まれたんだよ。さすがの俺も気になってさ、いざ従ってみると本当にいいことがあったんだよ」
ミタラシは目を輝かせながら、僕の顔にぐいと自分の顔を近づかせた。
僕の視界いっぱいに広がるクローズアップされた彼の顔は今後見たくない。
イナガワというのは彼が僕を呼ぶ時に使う名前で、過去に霊感があると話したら、何故かこの名前になった。
共通点が霊感以外見当たらない。
最初のコメントを投稿しよう!