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或る日、大学で奇妙なモノがブームになった。【かなえるメリーさん】などという携帯サイトらしい。
僕はとある芸術系大学の文芸科に所属していて、あまり他の学科と何かを共同制作したりなどと甚だ疎い学科だが、そんな文芸科にもその噂は舞い込んだ。
内容はメリーさんというお方が、その人の一日を管理して指令を与えるといった内容らしい。そして、その指令をこなせばゆくゆくは人生が成功するという絵に描いたようなブレインコントロールだ。
校内の食堂などもその話題で終始持ちきりで、右を見ても左を見ても、目をつぶっていてもその話題が尽きることはない。
僕は食堂のパフェをほおばりながら、みんなの会話に耳を澄ませていた。
ここの食堂のパフェはおいしい。値段も格安なさながら、決して手を抜かない。
溶けかけた生クリームと一緒にいちごを絡ませて食べる。そして最後は溶けきった生クリームとチョコレートがドロドロに絡んで見る影もないプリンを呑み込む。あぁ、至福なり。
結局、耳を澄ませたのも一瞬で、後はパフェのことしか考えていなかった。
僕がスプーンを置いたと同時に、まるで長年掃除されていない排水溝を見たような顔をした男が現れた。
「相変わらずすごいもん食ってるな」
と、訳の分からない一言を投げ捨て、僕の正面に座った。
「お前の皿に乗ってるエイリアンの肉もどうかと思うけど」
「ちょっと色が悪いだけじゃないか。味はちゃんとした肉だぞ」
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