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かつての両親は戻ってこない。 母が亡くなって、昔の父も亡くなった。 「…母さん」 母の墓に水をかけ、向日葵を添える。 メルの日常は母の墓参りから始まる。 「俺、また一つマジックができるようになったんだ」 折りたたみのステッキを伸ばすと、ステッキを回して上と投げれば大量のトランプが舞い落ちる。 「いつか、父さんと一緒にマジックショーが出来るよう頑張るから。また、「メル」で世界を渡れるように…みんなを…笑顔、にしてみせる」 複雑そうな顔で少し言葉に詰まりながらメルは母の墓から去って行った。 「おーい、メルー!」 家に帰ろうとすれば二階からの父の呼ぶ声。 顔を上げると袋を投げ渡される。 「ついでに街に行って買い物して来てくれ。どうせ行くんだろー」 父の言葉は最後まで聞かず、身を翻して中に入ってる買い物リストを見ながら、街へと向かった。
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