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「今、彼女は家に身分証を忘れて取りに帰る所です。」
「しかし、私はずっと門にいたが…」
いきなり兵士の前に拳を突き出して、力を込めると小さな煙とともにコスモスの花がメルの手に握られていた。
「あなたの好きな花屋の店員にこれをやればハートは奪えますよ」
コスモスを兵士に渡すと、メルは兵士を追い越す。
「タネは後で教えます。タネが料金と言うことで」
手をひらひらと振ると少女はメルの後を追いかける。
「お、おい!」
「マジシャンがタネを明かすんです。許してください。それとも、あなたの上司に花屋の店員が好きな事、言いますよ?
大問題でしょうね。帝国の軍人が帝国を裏切らぬように見張る街の住人に恋するなんて」
そう言えば兵士は追いかけてこなかった。
そんな兵士を見ながら少女は輝いた目でメルを見る。
「すごい!さっきの手品も凄いけど、弱味を握ってるなんて!」
「そこ誉められても嬉しくないんだけど。それに、あれは賭だった。あの兵士、やけに花屋の店員を見てたのを知ってたからな」
ほーっと頷きながら納得する少女。
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