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買い物をほとんどお前に頼んでいるのは、俺の顔を知られたらまずいから。 今まで黙っててすまなかった。 今まで、アーニャの墓の前でマジックをするお前を見ていた。 昨日の、ステッキをトランプにするマジックは素晴らしかった。 成長したな。 お前と暮らした日々は宝物だ。 できることならお前とマジックショーをしたかった。 メル、お前のそのマジックで皆を笑わせてくれ。― 「……」 手紙を握りしめるメル。 目に涙を浮かべ、声をこらえるよう泣く。 「メル、これを」 「!?」 領主からメルに差し出したのは茶色の小さな角のペンダント。それに恐る恐る触る。 「メル、これを知っているのか?」 「これは…父さんの…マジックショーをする時に、必ずもってたもの…」 しばらく見ていなかったが、まさか領主が持っているとは思わなかった。 「これ大事な物だから持っていてくれと言われたんだ。そんな物、何故私に渡すかわからなかったが…」
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