天壌無窮

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「なんかヤだなあ。これ後味悪そうぅぅ」 「こら。そんなこと言ったらあかん」 「そうですよ、そんなこと言ったら余計に不味くなるじゃないですか」 「不味いとか、もっと言っちゃダメだと思うよ?」 「ほらほら、喋ってないで早く済ませよう」 見開いた目は、二度と還ることのない空を仰ぐ。 アスファルトに縫い留められた背面がチリチリ焦げて、魂が凍えていくのを感じる。 視界のフレームを取り囲むのは五つの影。 その中心で、遠くから見下げてくる青白い月が『彼』には何よりも怖かった。 四肢を、皮膚を、引き裂かれる度に上がる飛沫が、あの光に溶けていく。 二度と還ることの出来ない恐怖。 『いただきます』 五つの影が、光に揺れた。
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