天壌無窮

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原因は明白すぎる。 夕べ食べたアレがいけなかったんだ。 「チビ、歩ける?トモに薬出してもらお」 本当は動きたくなかったけど俺は「ん」と、短い返事をして柔らかい布団から抜け出す。 チビ。それが俺の名前。 五人の中で一番小さいから。 それから、一番“若く”見えるから。 「胃もたれって。他のみんなは何ともないの?」 「うん、平気みたい。シキとユイも、もうどっか出掛けちゃっていないし」 長い板の間の廊下を歩きながら、前を歩くケイがハハと軽い調子で笑う。 廊下の先に続く離れは事務所に繋がっていて、近付くにつれて薄い紫煙と珈琲の匂いが鼻先を擽った。
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