飼う

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「ぼくこのセミかうー!!」 飼う。 少年は蝉の自由を奪う。 「蝉は大人になってから一週間しか生きられないんだぞ? 自由にしてやりなさい」 飼う。 大人は子どもの自由を奪う。 「お、君良いところに居た。親子水入らずの時に悪いが、来月急遽プレゼンを頼むことになったんだが……」 飼う。 上司は部下の自由を奪う。 「ふぅ……私はこれから会議に書類整理に重役との飲み会と……」 飼う。 会社は上司の自由を奪う。 「こんな案を出そうにも、今の社会のニーズに応えられそうにもない……」 飼う。 社会は会社の自由を奪う。 「もっと自由な国でありたい……そうすれば社会は更に豊かになるのに……」 飼う。 国は社会の自由を奪う。 「我が国では社会主義の重要性が再検討されつつある。だが今、革命を起こされてみろ? たちまちその流れが広まってしまう。君達の国では、民の抑止へと尽力するように!!」 飼う。 世界は国の自由を奪う。 「自然に立ち返らなければ……地球は壊されていくままだ。だがそれを捨てることは出来ない。長い時代の流れが私達をそうさせてしまったのだから」 飼う。 時代は世界の自由を奪う。 …………………………………… 飼う。 全てが時代の自由を奪う。
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