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「真尋、ごめんね?」
「良いよお母さん。仕方ないからね」
僕はキャリーバッグに手を掛けて立ち上がり、玄関の扉を押し開く
「本当にごめんね。まさか一年間も出張してこいなんて言われるなんて思いもしなかったし……」
「だから、気にしてないよ。でも、正直寂しいかな」
何度も何度も手を合わせて謝るお母さんに、僕は小さく苦笑した
「うん、お母さんも寂しいわ。でもあの子は優しいし何でもしてくれるから、きっと寂しい思いはしないと思うわ」
「うん。それじゃ……そろそろバスに遅れるから行くね?」
「えぇ、いってらっしゃい。また一年後に会いましょう」
お母さんは悲しそうに笑った後、僕と抱擁を交わした
ふんわりと優しい匂いがする……この匂いとも一年間お別れなんだね……
「じゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい」
僕は名残惜しくお母さんから離れると、キャリーバッグを引き摺って家を後にした
今、この瞬間から僕の不思議な一年間が幕を開けた……
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