359人が本棚に入れています
本棚に追加
理由は分からないが、咲は望を嫌っているんだ。
態度から明らかに”それ”が分かるんだけど――
「――ハァ……ハァ……追いついた」
「車にでも轢かれれば良かったんっすよ」
「ハッハッハ! 相変わらずツンデレだなぁ。サキは」
望のオツムが足りない為に、伝わっていない。
舌打ちした咲は、僕の手を引き歩き出す。
「行くっすよ! リョウ!」
「――おいおい! 俺を置いて行くなよ!」
何故か望は僕の空いている手――
右手を取り、並んで歩き出した。
――気持ち悪いんだけどね。
嫌悪感を望に向けるが、全く効いていない様子。
馬鹿とハサミは使い様――というが、望クラスになると、ハサミと比べるだけハサミに失礼だね。
三人が手を繋いで歩く不自然な光景は、すれ違う人々の視線を”これでもか!”と集めている。
段々とそれが目障りになり、僕は超加速を発動させた。
「うわっ!?」
「何すかっ!?」
驚愕する二人を他所に、景色は一瞬で移り変わる。
見慣れた僕の住む1LDKに着き、超加速を解除した。
最初のコメントを投稿しよう!