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「宏太」
"コウタ"……?何の事…?俺の…名前?俺を呼んでる?
…"俺"?
「宏太…」
瞼を持ち上げる。眩しい光り。頭が痛い。
光りに慣れた瞳に、目の前に広がるのは明るく照らす蛍光灯と蛍光灯のついた天上。そして。一人の人。
こっちを見て口角を上げるその顔は、何が基準かも解らないがとても綺麗で。ここからでも解る長身。
自然と見つめてしまった。
俺を呼んだのは…
「起きたみたいだね。気分はどう?まだ頭が痛いかな」
「い、や……」
問い掛けに声を発して返事するとその人はまた、綺麗に笑った。
「ここが何処だか解る?今が何日とか」
「…………」
ベッドに寝ていた体を、上半身だけ起こし周りを見渡した。
広く暗い。まるで倉庫。いや、研究室?解らない。
日付どころか自分が誰かも…
「っ……」
何かを考えようとすると頭痛が走る。
髪を掴み痛みに耐えようとすると、ふと手を握られた。
顔を上げれば、また綺麗な笑顔。
「考えなくていいよ。"思い出す"なんて事はしなくていいんだ。宏太はこれから、また新たに記憶を作れば…」
「…ゆっ……」
"ユウト"。
何故かそう、この人を呼びたくなった。
「僕は裕翔。宏太の…一番の理解者で居てあげるよ」
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