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裕翔はゆっくりと俺の手を下に下ろし、スラリと長い指で俺の頬を撫でる。
不思議と頭痛は消えていた。
「忘れてしまったモノは、自分には必要の無かった記憶だという事。もし今、何も解らないならこれから解っていけばいいだけ。思い出すなんて無駄な事、宏太はしなくていいよ」
「裕翔…」
「宏太。愛してる」
顎を掴まれ、顔を近付けられる。
唇と唇が重なれば、自然と気持ちよくなれた。
裕翔の閉ざされた瞼。長い睫毛。俺は、裕翔を知っている。でも、解らない。
「ふっ…ん……」
唇をわって自分の体温とはまた違う体温の、裕翔の舌が俺の口内に入ってナカを犯す。
甘くて、眠気とも似てる感覚で目を開けていられなくなる。逃げようと舌を動かしても、何度だって裕翔の舌が絡めとる。
このキス、知っている。
「はぁ…」
やっと離れた唇。裕翔の口から甘い吐息が溢れた。
何故かそれが苦しくて。目が熱くなる。
「これから沢山…。いい事も悪い事も教えてあげるよ」
裕翔の笑顔に。胸が痛むのがハッキリ解った。
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