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雑踏の中、立ち止まったノアをリリアはじっと見つめていた。そして、
「……少し分かった気がする」
と、ノアは呟いた。
「本当! 何が分かったの?」
素性の知れない少年の、少しでも、僅かでも手がかりがほしいリリアは、すぐにその言葉に反応した。
「ずっと遠く、誰も知らない所。地図にも無い、住所もない、山の奥、森の奥」
そう、ノアは単調に言った。
「誰も知らない所……?」
リリアはそれを聞いて、少し嫌な予感がした。
「そう、ここからずっと、離れた所。 どうしてか分からないけど、それしか分からない」
リリアは困り果てた。遠く離れた場所ということだけが分かっても意味が無い。せめて方角が分からなければ進むこともできないのだ。
リリアはとりあえず試してみようと思い、近くの駅に行って地図と路線図を持ってきた。
「どっちのほうか分かる? どれが一番近いかな」
そう問うと、ノアは地図をじっくり見た後、地図の端のほうを指差した。そしてそのまま少し悩んだ後、路線図の中から一本を選び出した。
「ここには無い。 でも、これが一番近いと思う。」
なんということだろう。この少年は地図の範囲にも無いような遠く離れた所からやってきたというのだろうか。
先ほどの言葉も、今の行動も、気にかかることが多すぎた。
しかし、ノアは路線図を指したまま、後は何も言わなかった。これ以上詳しい事はわからないのだろう。不確かだが、今は彼の情報を信じるしかない。
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