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中に入ると、男性が出迎えた。先ほどと変わらぬ心配をしている顔だ。
「その顔、何も知らない顔だな」
男性はとりあえず二人を玄関から別の部屋へと案内し、イスに腰掛けるよう促した。
「何も分からないです。 一体何が起きているんですか?」
そうリリアが聞くと男はこう言った。
「詳しく言うと長くなる。 簡単に言えば外にいると何時何が起こってもおかしくない危険な状態なんだ。 早くここを離れるといい」
やけにその顔は何かを恐れているようだった。リリアはここが相当危ない状況であることは察した。しかし、
「そう簡単には戻れないんです。 ここを通り抜けないといけないんです」
と言い返した。男は「しかし……」と呟いたが、リリアの気迫に押されて暫く黙った後、こう言った。
「よその人に如何こう出来る問題ではないと思うんだがな……。 ここは今『翼獣』ってやつに狙われてるんだ。 だから何時襲われてもおかしくない。 理由は分からないが、突然そうなったんだ。 そうだな……どうしても詳しく知りたいのならこの村の一番奥に住んでいる村長に一度あってみるといい。 くれぐれも慎重に行くんだぞ」
「翼獣……ですか」
リリアは呟いた。
大昔から存在するという、非常に美しい、そして強い力を持った生物だと聞いたことがある。その翼獣と争うとは一体何があったのだろう……。
リリアは一つ「ありがとうございました」と言って、ノアと共にそこを後にした。
息を潜めて村長の家へと急いだ。
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