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ひっそりとした村の奥に、周りより大きく、しっかりと構える一軒の家が見えてきた。恐らくあれが村長の家なのだろう。
リリアは急に怖くなってきた。翼獣との争いに果たして部外者が手を出していいものなのか……。このまま突っ込んでいけば絶対に翼獣と接触するだろう。遠回りになってもいい、安全な道を探していけば……。
考えながら歩いているといつの間にか玄関の前に立っていた。驚きで一歩後退するリリアの横を、ノアがすっと通っていった。
「ちょ、ちょっと待って」
その声が発せられると同時に、ノアは扉をノックしていた。コンコンと軽快な音が響く。リリアがただ呆然と扉を見ていると、暫くして小さな音がした。カチャリ、と鍵の開く音だ。
そして扉が小さく開き、その隙間から村長と思しき人物が顔を覗かせ、
「一体どうしたんだい……こんなところまで歩いてくるとは」
と驚いたように言った。それから「外は危険だ、とりあえず中に入りなさい」と、二人を家の中へと招きいれた。
家の中に入れられた二人は、そのまま応接間のソファに座らされた。
リリアは緊張と恐怖で実を強張らせている一方、ノアはただ冷静な瞳を正面に向けるだけだった。
やがて、二人を座らせてから台所へ行っていた村長が、三杯の茶をお盆に載せて持ってきた。
「まあ、まずは一口飲むといい。 ここに来ると言う事は何か大事なことがあってきたのだろう。 落ち着いて話してくれればいい」
村長はそういってテーブルに茶を並べていった。リリアは「すいません、いただきます」と一言断ってから、ゆっくりと一口飲んだ。ノアも「いただきます」と言い、茶を口にした。
二人が飲んだことを確認してから、村長は言った。
「して、一体君達はどうしたのだい。 見たところ、ここの者ではなさそうだが……」
その問いかけに、ノアが問い返した。
「この村では一体何が起きているのですか」
村長は一瞬顔をしかめた。
「まさか君達、争いに首を突っ込もうというのかい。 ……危険だ、やめておいたほうがいい。」
村長は静かに言った。そこで、ようやく落ち着いてきたリリアが口を開いた。
「何故争っているのです? 詳しく聞かせてください」
それを聞いて、一度村長は困ったような顔をしたが、二人に見つめられてしぶしぶといったように話し始めた。
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