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しばしの沈黙。
「……え?」
リリアは玄関から少年を見たまま、口をぽかんと開けていた。そのあと、
「あ、家の場所が分からないのかな。 じゃあ、名前は?」
と利いてみた。しかしそれにも少年は確信を持った表情を見せず、
「ノア……かな? うーん、そんな風に言われてた気もするけど、違う気もする……うーん」
と、うなり続けていた。
何故名前まで分からないのだろう。これは普通ではない。故に言う記憶喪失なのだろうか。リリアは衝撃を受け、困惑した。確証の無い名前を警察に言って、そんな人はいないとか、全く別の人物だったとしたらとんだ赤っ恥だ。
リリアは大きなため息をついて脱力した。家が見つかる気がしない。しかし、このまま放っておくわけにもいかない。どうしたものか。
リリアは仕方ないと自転車を玄関に止め、部屋の中へ戻る。そして、サイフやケイタイなど、外出する際に必要なものをポケットの中に入れた。そして、ノアと名乗る少年にこう言った。
「じゃあ、探しましょ。 風景を見たら何か分かるかもしれないよ」
それからリリアはノアの手を引いて、自転車を転がしながら外へ出た。
ノアはされるがままリリアについていった。
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