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俺は逃げる事にした。
こんな生活、もうゴメンだ。
長い間被験体になっていた自分の身体は、驚く程重くなっていた。
少しでも走ればすぐに息が上がってしまう。
「追え!そう遠くには行ってない!!」
「…!クソ…ッ!」
追手の声に身体の向きを変える。
心臓は既にはち切れんばかりに大きく脈打っている。
毎日毎日、よくわからない薬品を投与された。他にもいろいろ何かされたけど、催眠薬か何かのせいで目が覚めた頃には既に終わってしまっている。
俺は自分の身体がどのような実験に使われているのか知らない。
だからって自分の身体に違和感も何も感じないので、逆に怖いくらいだ。
ただし体力だけは確実に奪われてしまっているのがわかった。
昔はこの位じゃバテなかった。
毎日のように幼馴染と駆け回って遊んでいたから。
「…もう…、少し…!」
研究所の敷地から出てしまえば、逃げる方法はいくらでもあるはず。
ひとまず、ここから出ないと…
「!!」
そう考えていた時だった。
一見病衣にも見える、被験体用の番号付きの部屋着、
その襟元を何かに引っ張られる。
「捕まえた」
その声に自分の血の気が引いていくのが分かった。
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