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慌てて振り向けば、そこにいたのは案の定、白衣に身を包んだ研究所の職員だった。
「生体ナンバー13…」
見つかった。
やっぱり逃げ出すなんて無理だったんだ。
脱走に、失敗した…!
「クソッ!嫌だ!離せ…ッ!!」
最後の悪あがきのつもりで身体をくねらせた。
振りほどけるなんてこれっぽっちも思ってなかった。
しかし自分でもびっくりするほど、その手はあっさりと俺の着衣から手を離した。
「ついて来なさい」
研究員はそう言って歩き出す。
「…また隔離研究室か?」
「出口を案内してあげるんです。そちらでは警備員がいる。」
「…?!」
その言葉に呆気にとられる。
「…罠?」
「まさか。私は君を逃がして自由にさせてあげたいと思っただけだ。」
「…お前、俺を捕まえに来た訳じゃねえの?」
「そのつもりで来たんだけど、やっぱりやめました。もういいんです。」
「…?」
何なんだ、コイツ…。
研究員は俺に背を向けて歩き出す。
果たして信じてもいいのだろうか…?
こいつは研究員。敵だ。
しかしどの道、ここにいてもすぐに見つかるだろう。
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