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なんとか森を抜けると、そこには街があった。
街と言っても目の前の通りに車の姿はそれ程見当たらない。人の姿も疎ら。高い商業用ビルもテナント募集の看板が目立ち、あちこちに廃墟と化したような空き家も見える。
遠くに見える高架橋に電車が走っているから、恐らく駅は機能しているんだろう。
「……」
俺が来た頃は、こんなんじゃなかった。
つってもすぐに研究所に入れられてしまったからよく覚えてはいないんだけど…少なくとももっと活気があったはずだ。
まるで別世界になっていた。
ただでさえ不況な状態に戦争が重なった影響もあるのだろう。
でも、こうなってしまってもおかしくないくらい長い間、自分が研究所に囚われていたのかと思うと、何とも言い表せないような気持ちになってくる。
辛いな…。
「あっれえ?おにーさん、そんなカッコでどうしたの?マジウケんね!!」
声と共にニヤニヤとこちらに近づいてきた男。
アホ面でちゃらけたイメージを醸し出すそいつは、俺の前で立ち止まる。
「まさか病院から抜け出して来たとかー?何の病気か知らないけど、それじゃ治らないよー?」
「病気じゃないんで大丈夫です。」
「病気じゃないのにそんなカッコしてんのー?面白いねー。」
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