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研究所の部屋着は何も知らない人間にはただの病衣に見える。だからどこかの病院の入院患者と間違われたのだろう。
でも確かにこの男の言うとおり、人がまばらとはいえ外でこの格好じゃ相当目立つ。
研究所の連中だって噂を聞きつけて連れ戻しにくるかも知れない。
何処かで着替えねーと…。
「ねぇおにーさんさ、あんたなんか不思議な感じするねー。」
「…は?」
「なんか知らねーけど惹かれるんだわー、興味湧くー。
ねぇこれから時間あったりする?一緒に楽しい事しねぇ?」
楽しい事って何だよ…
気持ち悪い…。
「いや、俺急いでるんで無理です。」
「つれねー事言うなってー。」
男はお構いなしに俺の腕をぐいぐいと引っ張ってくる。
聞いといて結局こっちの都合は無視かよ…。
「この辺りはさびれて何もないけどちょっと歩いた所にホテルあるじゃん?どう?」
どう?じゃねーよ。
何が楽しくて脱走して早々男とホテル行かなきゃいけねーんだよ。何の罰ゲームだ。
「俺は急いでて…」
「急いで何処行くの?」
「何処って…」
「てゆーかもしかしておにーさん、この辺りは初めて的な?俺が案内してあげるって!」
どうやら俺から離れるつもりは毛頭無いらしい。
こんな所でのんびりしていては追手が来るかも知れない。
俺が外に逃げ出したという事を知った連中が…。
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