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?時 車内
もう何時間走っているだろうか。
この車はどこへ向かっているのだろうと俺はいつも思う。
たどり着く場所は俺の俺の本部なのだがそれがどこの都道府県、どこの地域なのかは全く分からない。
車の内側から外の景色は見えない。窓はマジックミラーになっている。
運転手は毎回変わるし話しかけても応答はない。運転手が話すときといったら目的地に到着したとき、ただ「到着しました」の一言だけだ。
紹介が遅れたが俺の名前は出井慧斗(でい・けいと)。いや、正確に言えばさっきまでの名前は、だ。
俺の名前は仕事場〔学校〕が変わる度に変わる。
俺は自分の本当の名前を知らない。俺には過去の記憶がないのだ。
「到着しました」
運転手の声を聞き俺は車を降りる。
そこは本部の駐車場である。
100メートル四方の広い空間。駐車場というだけあって色々な乗り物がとめてある。車やバイクだけではない。中には水上バイクやクレーン車、ロードローラーまである。
これらはこの本部にいる社員達のモノではない。全て俺が仕事で使うのだ。
ここに窓はなく外の光は射し込まない。故に今が朝なのか、昼なのか、夜なのか分からない。
天井に張り巡らされた蛍光灯がチラつく下を俺は歩く。奥にある大きな扉に向かって。
大きな金属製の扉である。
俺は扉の前に立ち扉に張り付いたテンキーを打つ。
その桁ざっと50。
俺は記憶してある暗証番号を一気に打ち込んだ。普通の人間にとっては厳しいことだと思うが俺にとっては容易いことだった。
数字を全て打ち込むと扉が開いた。
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