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――拝啓、父さん、母さん、その他諸々の皆様。
最近梅雨明けしたというのもあり暑い日が続きますが、調子はいかがでしょうか?
私、片月 陸は――――
今、現在進行形で死にそうです。
「おわぁぁぁ!?」
轟音が耳朶を打つ。
ざらついた固く重いものが強い衝撃で砕かれ、破片を散らしながら瓦解する音。
それらは互いにその身を削りながら道路のアスファルトへ落ちていき、閑静な住宅街に乾いた音を響かせた。
何故彼がそんなものに追いかけられているか、というと話は少し遡る。
――2018年、7月のS県。
家から徒歩20分程の距離にある高校、「神有高等学校」に通う高校1年生の片月 陸はその日、セミの鳴き声で目を覚ました。
「あっつ……セミとかマジで滅ばねぇかな」
別にセミのせいで暑いわけではないが、吐き捨てるように悪態をついて欠伸をしながら伸びをする。
「ん――――……」
それによって靄がかかったような意識をほんの少しだけ明瞭にすると、枕元の時計に目を向けた。
8:12
時計に表示されている時間を見た瞬間、陸の表情が固まる。そしてしばし硬直した後、目を見開き――
「遅刻だ―――――!!」
――絶叫が、朝の片月家に響き渡った。
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