君に贈る応援歌～クリエイター始めました

一、黒板を見ない少女

かったりぃ授業が進んで行くのを、オレ――村上 健治(ﾑﾗｶﾐ･ｹﾝｼﾞ)は教室の後ろからぼんやり眺めていた。

来年の春を迎える前に、センター試験を迎える受験生という身分だからか、板書がなくてもクラスの大体のヤツらは頑張って目を開けてる。

不真面目に寝ようかと迷ってるヤツなんか、オレくらいしかいない。

――いや、違うか、と思ってオレは一番窓側の列の、前から三番目に座る少女に目をやった。

黒板には文字なんか一つも書かれてないのに、一人だけずっとカリカリとペンを動かしてる少女。

授業が始まってから、いや、始まる前から、一度も顔を上げてない。