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「筒井のシスコンは健在かぁ…」
「シスコン言うな!」
ひとしきりからかわれて、筒井はご立腹の様子だ。
「……そういえば、中園ってオリオン製薬の本社だよな?」
「うん」
安斎が口にした社名は、日本人がよく知る一流企業だった。
咲恵はその本社で、新薬開発の研究をしている。
「すげーよな。今日は親に会いに来たのか?」
「……ううん」
「……そっか」
二人の表情は、触れてはいけないものに触れてしまったかのように強ばっていた。
きっと二人は知っている。
咲恵が何故、今日故郷へ帰って来たか。
これから咲恵が行こうとしている場所がどこなのか。
「これ、ちょうだい」
咲恵は、白と青の花を使ってフラワーアレンジされたバスケットを抱えた。
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