プロローグ

2/15
前へ
/194ページ
次へ
  山手の小高い丘の上にある、緑豊かな、その墓地は、横浜港やベイブリッジが、一望できる絶景の場所にあった。 この墓地を訪れる人のほとんどは観光客で、一般には平日と冬季は非公開になっているのだが、墓地の維持、管理費のほとんどが、観光客からの寄付金で、まかなわれている。 史料館と管理室が併設されている、立派な石造りの正門は、今日は非公開日に当たり、扉は固く閉ざされ、辺りに人影はなく、しんと静まり返っていた。 雑木林に囲まれた広い敷地内の、区画は桜や楓で仕切られて、白や褐色の大理石や、御影石の墓石が整然と並んでいる、その間を迷路のような小道が丘の上に続いていた。  
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

548人が本棚に入れています
本棚に追加