意地悪な高校教師

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腕時計の秒針は、規則正しいリズムで動いているのに 私達三人の間には、何処までも不規則で、これから何が起こるのか予想出来ないような空気が流れていた。 か、か、神様…… な、なんでこんな所にこの人がいるんですか……? 「……ヨーグルトちゃん?」 今、彼の隣にいるお姫様みたいな女の人が口を開いた。 美形な王子様と、美しく可憐なお姫様…… そして二人の目の前にいる、ただの村人…… この状況を見たら、きっと誰でもそう思う。 分かってるから、いいんだけど…… って、そんな事よりなんでこの人がここにいるの!!? 「や、何でもない」 王子様はそう言って、ズカズカと遠慮なく村人に近付いて来た。 ちょ、え、こ、こ、怖いんですけど… 私は少し後退りをした。 「一樹?」 “イツキ" それは、出会って三回目で初めて知ったこの怖い王子様の名前。 それから、もう一つ。 “イツキ”と呼ばれたこの王子様には、こんなに素敵な相手がいるという事も知った…… なんだか、胸の中が落ち着かない。 怖いからじゃない。 いつもと違う音が、いつもと違うリズムで、体の中を叩き始めている。 「二度ある事って、本当に三度あるんだ」 “イツキ”さんは、私が落とした鍵をひょいっと拾った。 「……俺、引っ越して来たばっかでまだ隣に挨拶行けてなかったんだけど。 ま、嬉しいよ。あんたがお隣さんで」 ドクッ…… 何をどう言ったらいいのか、まるで分からないモヤモヤした気持ちが何度も空回りする。 自分でもよく理解出来ない気持ち…… 「これからも隣同士よろしく……」 ガシッ "イツキ"さんから鍵をひったくると、全力で通路を走り出した。 「ちょ、おいっ…」 彼の呼び掛けに全然聞こえないふりをして 朝の清々しい空気を感じる余裕もないくらいに、駅までの道を全力疾走した。 なんだか…… 上手く振る舞えない……
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