2686人が本棚に入れています
本棚に追加
「お疲れ様でしたー」
6時ちょっと過ぎにバイト先を出て、駅前のスーパーで夕飯の買い物をしてからアパートまでの道のりを歩いた。
いつも通りの帰り道を、いつも通りのペースで、いつも通りすっかり暗くなった空の色を時々見上げたりしながら。
一つ、いつも通りじゃない事があるとすれば、家に向かう足取りが少しだけ重い事だ。
『ヨーグルトちゃん』
まさかあの人と隣同士の部屋だったなんて……
そんなドラマみたいな事、自分には一生起こらないだろうなって思っていたのに……
一つ、溜め息が漏れた。
あの人が、私なんて全然気にしていないのはよく分かってる。
もしかしたら、今日の朝の出来事だってすっかり忘れてるかもしれない。
あんなに美人な彼女(らしき人)もいる事だし………
それは分かっているのだけど………
もしまたあの人に会ったら、正直どんな風に接すればいいのか分からない……
多分また、面白がってからかわれるんだろうな……
いちいち本気で反応してしまう私が悪いんだけど……
歩きながら、ガサガサと手に持ったスーパーの袋が揺れている。
また、溜め息が漏れた。
情けないなあ……
もっと、平然と振る舞えたら良いのにな……
『26にもなって、冗談信じるお前が悪い』
本当に、高野さんの言う通りだ……
「……今日はヨーグルト買ったの?」
突然耳元でふわっと緩やかな風を感じ、心臓が飛び出しそうなほどドキリと大きく音を立てた。
最初のコメントを投稿しよう!